ストックホルム中心部から電車とバスでおよそ1時間。
喧騒から少し離れた場所に、北欧最古の街といわれるシグトゥーナ(Sigtuna)があります。
筆者が訪れたのは2019年5月6日の朝。空気は澄み渡り、まだ観光客の姿もまばら。
北欧の春らしい冷たい風が頬を撫でる中、古い木造の街並みを歩きながら、「ここは時間の流れが少し違うな」と感じたのを今でも覚えています。
📌 基本情報
項目 | 内容 |
---|---|
所在地 | Sigtuna, Stockholm County, Sweden |
アクセス | ストックホルム中央駅から電車(Märsta駅下車)→バスで約20分 |
所要時間 | 日帰り観光で約3〜4時間が目安 |
主な見どころ | Stora gatan(メインストリート)、マリア教会、旧市庁舎、シグトゥーナ博物館 |
ベストシーズン | 5〜9月(花が咲き街歩きが気持ちいい時期) |
シグトゥーナは、スウェーデン王国が誕生した11世紀ごろに建設された最古の都市のひとつ。
現在もストックホルム郊外の「ソーデルテリエ」方面から電車→バスで約1時間ほどでアクセスできます。
小さな町なので、徒歩でじゅうぶん回れます。
駅を出てから湖畔まで続くストーラガータン(Stora gatan)がメイン通り。
木造の家々、かわいらしい看板、小さなカフェや雑貨屋が並び、どこを切り取っても北欧らしい温かみのある景色です。
📷 朝の旧市街を歩く|木造の家と石畳の通り
筆者が到着したのは午前9時半。
通りにはまだ地元の人が数人歩いているだけで、観光客の姿はほとんどありません。
黄色や赤、オレンジなど、淡い色の木造建築が整然と並び、それぞれの家に花のプランターが飾られているのが印象的でした。
ときおりパンの焼ける匂いが風に乗って漂い、どこか懐かしい「人の暮らしの匂い」を感じます。
ストックホルムの洗練された都会とは違う、シグトゥーナの静かな朝には、旅の原点のような穏やかさがありました。



🌟 北欧らしい彩り|パステルの家並みと街角の光景
通りを進むにつれ、建物の外壁の色が少しずつ変化します。
ベージュやグリーン、レンガ色など、北欧の柔らかな光を受けて、まるで絵本のページのように街が輝いて見えました。
軒先にはスウェーデン国旗がはためき、カフェや雑貨店の小さな看板が並びます。
どのお店も個人経営で、チェーン店のような無機質さがありません。
この通りを歩くだけでも、スウェーデンの文化がゆっくりと心に染みてくるようでした。



⚜️ 歴史を感じる建築たち|旧市庁舎とマリア教会
メインストリートの突き当たりにある旧市庁舎(Sigtuna Rådhus)は、18世紀に建てられたスウェーデン最小の市庁舎として知られています。
小さな鐘楼が付いた木造の建物は、まるでおとぎ話に出てくる家のよう。
現在は内部が展示スペースとして開放されています。


さらに歩くと、赤レンガ造りのマリア教会(Mariakyrkan)が見えてきます。
12世紀ごろに建てられたゴシック様式の教会で、スウェーデン最古のレンガ建築のひとつといわれています。
レンガのアーチや黒い屋根のラインが美しく、長い歴史の中で幾度も修復を重ねながら今も静かに街を見守っています。


☕ RC Chocolat シグトゥーナ店で過ごした朝のひととき
シグトゥーナに着いたのは朝9時半。
ストックホルムを出てから何も食べていなかった筆者は、通り沿いでひときわ明るい黄色の建物が目を引くRC Chocolat Sigtunaへ足を向けました。
RC Chocolat はスウェーデン国内に数店舗を構える人気パティスリー&カフェで、手作りのチョコレートやケーキ、サンドイッチが評判。
シグトゥーナ店はその中でも特に雰囲気がよく、メインストリート「Stora gatan」 の真ん中に位置するため、朝の散歩の途中に立ち寄る地元客も多いそうです。



店内は木の温もりを感じる北欧デザインで、壁際にはチョコレートや焼き菓子のショーケースが並び、ガラス越しに並ぶペストリーの香りがふわりと漂います。
奥にはゆったりとしたテーブル席、手前にはカウンター席があり、窓の外に石畳の通りを望む絶好のロケーション。
朝の光が斜めに差し込む店内は、まるで北欧の絵本の一場面のようでした。
カウンターで注文したのは、シュリンプサンドとアールグレイのミルクティー、そして小さな焼き菓子。
ぷりっとした海老にレモンとディルが香り、軽いマヨネーズソースがパンにしっとりと染みていて、空腹だった体に北欧の朝の滋味がすっと広がります。
食後はショーケースのケーキをじっと眺めてしまうほど、どれも美しく丁寧に作られています。
チョコレートムースやベリータルトなど、季節ごとに変わるスイーツは「甘さ控えめで上品」と評判。
アーランダ空港にも支店があるため、旅の最後に再訪する人も多いそうです。
窓際の席に座り、コーヒーを片手に外の通りを眺める時間は、旅の朝をゆっくりと整える最高のひとときでした。
まだ観光客の少ないシグトゥーナの通りを眺めながら、「これからの1日がどんな時間になるのだろう」と思うと、自然と心が軽くなっていきました。
🕊️ 心がほどけた、ひとつの出会い
その店で、忘れられない小さな出来事がありました。
レジで応対してくれたのは若い男性。そのすぐ後ろに、おそらく彼のお母さんと思しき年配の女性がぴたりと寄り添って立っていました。
彼女は筆者をじっと見つめていました。
その視線には、警戒なのか、好奇心なのか分からない複雑な感情が混ざっていました。
「アジア人の女性がこんな小さな街まで来るなんて珍しいのだろう」
そう思いながらも、少し居心地の悪さを感じたのも事実です。
ストックホルムでは一度だけ、年配の女性から不当な扱いを受けたことがあり、その記憶がふとよみがえりました。


しかし、会計を終えて商品を受け取るとき、ふとその女性と目が合いました。なぜか自然に、筆者は微笑んでいました。
すると彼女の表情が一瞬で変わり、まるで久しぶりに孫と再会したような、人懐っこく温かい笑顔を返してくれたのです。
その瞬間、胸の奥がじんわりと温かくなり、「やっぱり来てよかった」と心から思いました。
それからのシグトゥーナの街歩きは、いつもよりも少しだけ優しい景色に見えたのです。
旅で偶然出会った人次第でその土地への評価が大きく変わるもの。朝で急いでいたとはいえ、なぜもっと話しかけなかったんだろうと今でも後悔しています。
👥 こんな人におすすめ
静かな朝の街歩きを楽しみたい人
└ ストックホルムの喧騒を離れ、鳥の声とパンの香りだけが漂う時間を味わいたい人。
早朝の9時台なら観光客がほとんどおらず、石畳を独り占めできます。
北欧の“暮らしの延長線”を体験したい人
└ 観光名所ではなく、地元の人の生活に溶け込むような街を歩きたい人。
住人がドアの前に花を飾る姿や、郵便配達員の穏やかな足取りに癒されます。
フィーカ文化を本場で感じたい人
└ コーヒーを片手にゆっくり過ごすスウェーデン流のカフェタイム(フィーカ)を実体験したい人。
RC Chocolat の窓際席で、通りを眺めながら時間を忘れる感覚を味わえます。
カメラ片手に“北欧らしさ”を撮り歩きたい人
└ 黄色や赤、ベージュの木造家屋が並ぶ通りはどこを切り取っても絵になる風景。
晴れた午前中の柔らかい光が、街並みをいちばん美しく見せてくれます。
ストックホルムから日帰りで“非日常”を感じたい人
└ Märsta駅からバスでわずか20分。アクセスの良さと穏やかな空気感のギャップが魅力。
午前中はシグトゥーナ、午後はストックホルムの旧市街という組み合わせもおすすめです。
人との触れ合いを大切にする旅が好きな人
└ 見知らぬ人との笑顔のやりとりや、偶然の出会いに心が動く瞬間を求めている人。
筆者が体験したような小さな交流が、旅の印象を温かく残してくれるでしょう。


📝 まとめ
ストックホルムの華やかな街並みとは対照的に、シグトゥーナには「何もないことの豊かさ」があります。
カフェでの小さな笑顔のやりとりが、旅の印象を変えてしまうように、この街には、人の温かさと静かな時間が確かに息づいていました。
旅慣れた人こそ訪れてほしい、北欧の原点のような小さな街です。



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筆者も次に訪れるなら、現地の歴史や暮らしをもっと深く知るためにガイド付きで歩いてみたいと思いました。
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