アビスコ国立公園の玄関口「STFツーリストステーション」レビュー|極北の宿で過ごす静寂の時間

北極圏にあるスウェーデン・アビスコは、オーロラ観測の聖地として知られる小さな村です。
筆者はその中心にある「STFツーリストステーション」に宿泊しました。
国立公園の玄関口に建つこの宿は、自然とともに暮らす北欧らしい穏やかな時間の流れに包まれていました。

Contents

📌 基本情報

項目内容
名称STF Abisko Turiststation(STFツーリストステーション)
所在地Abisko National Park, Lapland, Sweden
アクセスキルナ駅から鉄道で約1時間。Abisko Turiststation駅下車すぐ
チェックイン/アウト15:00/10:00
施設レストラン、売店、共用キッチン、乾燥室、サウナ
公式サイトSTF公式サイト
滞在時期2023年3月中旬(冬季)

🛏 客室と設備

筆者が宿泊したのは「シングルルーム・スタンダード」です。
木の温もりを感じる北欧らしいデザインで、必要なものが過不足なく整っていました。
豪華さはありませんが、ベッドは清潔で寝具も上質です。
暖房の効きも良く、外が氷点下10度前後でも室内は快適に過ごせました。

窓の外には雪景色が広がり、朝は淡いオレンジ色の光が差し込みます。
夜には、運が良ければ室内からうっすらとオーロラの光が見えることもあります。

共用スペースにはキッチンや乾燥室があり、登山客やスキー客が準備を整える姿をよく見かけました。
Wi-Fiはやや弱めですが、この静寂の中ではむしろデジタルから離れる時間が心地よく感じられます。

🍽 食事事情(昼食・夕食・売店)

北極圏での食事は、正直に言うとやや厳しい印象でした。
まず昼食ですが、レストランで提供されるメニューは高価なうえに味も平凡で、選択肢がほとんどありません。
筆者が注文したスープとパンのセットは2,000円近くしましたが、温かさ以外に特筆すべき点はありませんでした。

3/17に食べた夕食

館内の売店では、サンドウィッチやサラダ、ヨーグルトなどの軽食と、スナック類が販売されています。
スナックは常に在庫がありますが、サンドウィッチなどの日持ちしない軽食はすぐに売り切れてしまいます。
しかも味はあまり期待しない方が良いでしょう。
夕食も前菜・メイン・デザートの3択制で、選ぶというよりは「どれを諦めるか」に近い感覚でした。
美味しさを求める旅行者にはやや厳しい環境ですが、これも北極圏の現実だと思います。

もし買い出しを考える場合は、最寄りのスーパーが徒歩30分ほど離れた別の駅(地元では“街”と呼ばれる小さな集落)にあります。
ただし電車の本数は少なく、惣菜の種類も限られています。
“食を楽しむ旅”ではなく、“自然を味わう旅”として割り切る心構えが必要だと感じました。

📷 オーロラ観測体験

夜のアビスコは、まるで世界が音を失ったかのように静まり返ります。
宿の裏手には国立公園へと続くトレイルがあり、明かりのない雪原を少し進むと、そこには別世界のような静寂が広がっています。
空気は凍るように澄み渡り、やがて天頂からゆっくりと緑の光が揺れ始めました。
それは言葉にできないほど幻想的で、筆者は息をひそめて見上げるしかありませんでした。

オーロラは気まぐれですが、アビスコは晴天率が高く、観測確率も非常に高い地域です。
防寒対策を万全にして、風の音だけを聞きながら空を見上げる――この時間こそが、この宿に泊まる最大の価値だと感じます。

⚠ アビスコ脱出劇:夜行列車トラブルと人の温かさ

滞在最後の夜、筆者はストックホルム行きの夜行列車(通称ナイトトレイン)に乗る予定でした。
発車時刻は16時過ぎ。15時50分に駅へ向かおうとホテルの出入口に立つと、電光掲示板に「2時間遅延」と表示されていました。

慌ててフロントへ駆け寄ると、スタッフは淡々とした口調で「電光掲示板がそう言っているなら、そうなんでしょうね」と一言。
あまりのあっさりした反応に、かえって現実味を覚えたほどです。

翌朝10時過ぎには、アーランダ空港発ヘルシンキ・ヴァンター空港行きのフライトを控えていました。
フロント前で必死に代替手段を探していると、周囲の宿泊客たちが興味を持って集まりはじめます。
そのうちの一人の男性が「明日、キルナ発のSAS便ならアーランダまで飛べる」と教えてくれました。
急いでスマホを開くと残席3。迷う暇もなく即座に予約し、同時に今夜の宿泊も再度予約しました。

次の問題はキルナまでの移動手段です。
タクシーはおよそ3万円。もはや覚悟を決めかけたそのとき、近くにいた老夫婦が声をかけてくださいました。
「明日、私たちレンタカーでキルナに行くの。よければ一緒にどう?」
その優しさに胸が熱くなり、筆者は感謝の気持ちでいっぱいになりました。
翌朝、彼らの車に同乗してキルナ空港へ向かい、無事にアーランダ経由で日本に帰国することができました。

その後、スマホの列車追跡アプリを確認すると――
あの夜、2時間も遅れて出発したはずのナイトトレインが、なぜか予定通りにストックホルムへ到着していたとのこと。
一体どうやったのか、今でも謎のままです。

👥 どんな人におすすめ

  • オーロラ観測を旅の目的にしている方
  • 静かな自然環境で過ごしたい方
  • 北欧の極夜や白夜を体験してみたい方
  • ホテルの快適さよりも“現地の空気”を重視する方
  • 食事や買い物に不便でも、それを含めて旅を楽しめる方

📝 まとめ

STFツーリストステーションは、アクセスや食の選択肢などに制約はあるものの、滞在そのものはとても快適でした。
暖房の効いた清潔な部屋で、静かな自然と向き合う時間をゆっくり味わえます。
北極圏という非日常の中で、自然と人の温かさに触れたい方には唯一無二の宿です。
アビスコの夜空に揺らめくオーロラ、そして思いがけない出会い――。
この宿で過ごした数日間は、筆者にとって忘れがたい旅の記憶となりました。


北欧の静寂に包まれたアビスコでは、ただ宿に泊まるだけでなく、オーロラ観測やスノーシュートレッキングなどの体験を現地で予約する人も多くいます。
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